【司祭メッセージ】
主任司祭 保久 要 神父様
「ノーベル賞」
10月初め、日本人のノーベル賞受賞のニュースが相次ぎました。
生理学・医学賞の坂口志文氏は、制御性T細胞という特殊な免疫細胞の発見による受賞です。免疫は外部から侵入してくるウイルスなどの異物をやっつける防衛システムです。でもときに過剰に働き、自分自身をも攻撃してしまうこともあり、それが関節リウマチなどの自己免疫疾患を引き起こします。そういった免疫の行き過ぎを抑えるブレーキの役割をする細胞を発見したというわけです。
ただこの偉業は今回の受賞者たちだけで成し遂げられたのではなく、それに先立つ多くの研究者の苦労の上に成り立っています。免疫学者の多田富雄さんもそのひとりです。多田さんはこのブレーキ役の細胞発見には至りませんでしたが、免疫が他者を排除するだけでなく、受け入れることもある「免疫学的寛容」を紹介し、それをわたしたちの社会にも生かすよう提唱されました。たとえばヘルペスのウイルスは、一度感染すると一生排除されないそうです。ウイルスを完全に排除するためには、宿主である人間の細胞まで殺さなければならず、そうすると人は生きられません。そこで大掛かりな排除作戦を中止し、抗体の生産を抑制し、平和共存の道を選ぶのだそうです。某国のように、「世界を自分が監視しているという免疫系を気取った傲慢さ」ではなく、「一度引いて共存関係を探る『寛容』というもう一つの戦略」を免疫から学ぶべきだということです(多田富雄/柳沢桂子『いのちへの対話 露の身ながら』集英社文庫PP.188-190)。
続けて発表された化学賞は、金属有機構造体なる材料を開発した北川進氏らに決まりました。この素材は内部に穴がいっぱいあいていて、二酸化炭素やメタンガスを吸収出来たり、空気からエネルギーを取り出したりできるそうです。地球温暖化に歯止めがかけられそうですし、石油や石炭などの資源と違って、どんな国にもある空気がエネルギーになれば、資源をめぐる争いがなくなると期待されます(朝日新聞10月9日朝刊)。
異物を排除するだけではなく時には受け入れ、共存してゆく免疫。神様から預かった自然を守り、争いのない世界を作る手段となりうる素材。なんかとっても素晴らしい!わたしたち一人ひとりもそういった役割を少しずつでも果たせたらいいな、と思っています。
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2025年10月18日:「司祭メッセージ」を更新しました。
2025年10月 4日:「10月の典礼」を更新しました。
2025年 9月28日:「司祭メッセージ」を更新しました。
2025年 8月30日:「9月の典礼」を更新しました。
2025年 8月 1日:「司祭メッセージ」を更新しました。







